結論から言うとないです!!
検索で来られた方、、申し訳ございません。
ブレーキの効きは地道な微調整が必要です。
ブレーキ調整用の専用工具が「ブレーキシューチューナー」等の商品名で販売されていますが(全くとは言わないですが)意味がありません。
ブレーキは、負荷が掛かった時に、大きくたわみが発生します。
- ブレーキレバーを軽く握った時と、強く引き絞った時。
- 回転する車輪にブレーキシューが引きづられた時。
様々な要因で「静的」に取り付けたブレーキシューは実走行の「動的」な場面では、役不足です。
ブレーキシューのトーイン調整に関するシマノのサービスマニュアルからの引用です。
トーインを付ける理由は、
ブレーキシューが回転するリムに引きづられた時に、トーイン分がキャンセルされる程度の僅かなたわみが生じ、
取り付け時ではなく作動時に良い塩梅にシューがリムを押さえつける必要があるためです。
これと同様に、トーインだけでなくトーダウンも必要となります。
ブレーキを掛けると、シューがリムの回転方向(青矢印)に引きづられる事により、固定ボルトを中心に振り子のように(赤矢印)たわみが発生します。
このたわみ量は、ブレーキキャリパーの剛性が直接的に関係します。
ある一定以上の品質を有しているロードコンポであれば、危険な程のたわみは発生しませんが、やる気のないシティーサイクルのプレス形成サイドプルブレーキなどでは、ブレーキシューがリムを飛び越してタイヤのサイドウォールを削るほど、危険なシャクレが発生する物も珍しくありません。
その他にも、ブレーキシューとリムの摩擦係数。取り付け部のフレーム剛性。
等々。
ブレーキを掛ける速度、晴/雨の気候条件。機材以外の部分にも様々な要素が存在します。
そのため、一概にトーイン量は○○mm。と規定することはできない。というのが私の考えです。
ではどうするか?
取り敢えず仮止めした後テスト走行後微調整
(文頭で書いたブレーキシューチューナーはこの"取り敢えず取りつける"際に役立ちます。)
オーナーズマニュアルを参考に取り付けてから、テスト走行を行います。
+アルファの取り付けのコツです。
- ブレーキシュー(船)取付ボルトをユルユルに緩めます。
- ブレーキレバーを遊びの範囲の70%程度握りこみます。
- この段階でユラユラのブレーキシューをリムの適正位置に押し付けます。
- ブレーキレバーを目いっぱい握りこみブレーキシューを迎えに行きます。
- ブレーキシュー取付ボルトを締めこみます。
ブレーキシューの上下位置調整は、固定部分の長穴での上下調整に加え、ブレーキシューの上下首振りでも上下を調整することが可能です。
Vブレーキは首振り角度が大きく、キャリパーブレーキの首振り角度は小さいとの違いがありますが、首振り角度が調整可能です。
シューの当たり面と、リムの当たり面の傾きを最小限にする努力をします。
ブレーキシューの表面は全ての面がリムを捉えることにより、最大限の制動力を発揮しますので「首振り角度」は重要な問題です。
メーカーは制動力向上のために「首振り角」を設定していますが、
安易な調整の「首振り角」で固定した結果、制動力を落としては本末転倒です。
この「静」の状態で、完璧に調整ができたとしても、実走中の制動場面では、上で述べた「ブレーキ本体のたわみ」により、リムとブレーキシューの当たりが変化してきます。
テスト走行後ブレーキシューを取り外します。
この場合、船からシューのみを取り外します。
現在の船の取り付け位置が、今後の再調整の基準点となるので、この時点では船取付ボルトには手を付けません。
取り外したシューの当たりを確認して微調整を行います。
取り外したフロント右側シューの実物です。
細い方(写真左)が前 太い方(写真右)が後ろです。
後ろ上が当たっていません。
この場合、トーインが強過ぎ。上下首振り角度が上向き過ぎ。
という結果です。
船の取付ボルトを緩めて、
- トーインを弱く
- 首振り角度を下向きに
- 首振り角度を相殺する分量だけシュー全体を長穴上側に
調整を行います。
更にテスト走行を行い、次回取り外した時の指標とするために、ブレーキシューの当たり面を、#240程度のペーパーで軽く整えておきます。
この際後ろから2つ目のブロックに金属片の食い込みも同時に除去することが必要です。
この微調整を何度か行い、完璧に「動的な」ブレーキシューの当たりを目指してください。
上位ランクのキャリパーに装換する。効きの良いといわれるブレーキシューに交換する。等、ブレーキ沼にはまるのも楽しいものですが、基本に立ち戻ってブレーキを見直してみると、更に愛車に愛着が湧くものです。
一度ブレーキシューを取り外して、確認して見られてはどうでしょうか?